Saturday, June 03, 2006

 

なぜカタマランなのか ?

ヨットを始める以前からカタマランが欲しいと理由も無く思っていたのです。
無理にあの時点での理由を探すならば、ヨットの世界ではまだ考え方が新しく、西洋の帆船から来た発想を元にヨットとはこんな物だと言った考え方への反発のようなものだったと思う。

それから20年近くセーリングの経験を積んだ今になっても、以前欲しかったカタマランが今でも欲しいと思うのです。
その理由を今考えて見ますと、
先ず一番先に考える事はその船をどのように使うのか?
私の場合はクルージングをする為に造るのですから、安全な事、適当に速いこと、居住性があること、が大きな問題点となることです。

カタマランは先ずモノハル(単体艇)と比べて速い。
この理由は軽いと言う事と水中抵抗がキールの大きいモノハルに比べて少ないと言う理由からである。ほかにも理由はありますが大きな理由はこの点でしょう。
ではどのぐらい速いか?と言いますと同じ大きさのクルージンが艇が一日100マイル走るとしますと、カタマランは200マイルから300マイル走ります。
クルージングにおいてなぜそんなに速く走る必要があるのか?と言いますと
今のセーリングは安全の為にコンピューターで現在位置と天候を読み取り、荒天から逃れ目的地に向かうのが一般的です。
荒天と言うのは3日前ぐらいから分かります。そして地球の自転があるため西から東へと15ノットから20ノットのスピードで移動します。簡単に言いますと、この時に高気圧がどの位置にありどのぐらいの強さか?により、速さと移動する方向が少し変ってきます。
そこで速い船では荒天から離れる方向に逃げ安全に航海するのです。
カタマランの場合三日前に荒天を発見すると現在位置から600マイル以上離れることが出来ます。これがモノハル艇では300マイルです。荒天が航行中のヨットに向かってくるとしますと一日で480マイル移動します、幾ら離れると言っても荒天に捕まってしまうのです。
カタマランの場合は逃げ切ることが出来るわけです。

荒天に捕まったら如何するか?と言いますと
ヨットのタイプで変ってきますが、モノハルのフルキールの場合はヒーブツーで荒天が去るのを待ちます。
フィンキールの場合は風下斜めの方向に波より速くもなく遅くもなく走り逃げます。
この時には海にスペースがあることが条件となります。これをランニングアウェイと言います。この時の海の広さは最低一日500マイル必要になってきます。
海に広さが無い場合は如何するか?と言いますと、
昔のようにセールを総て降ろしライイングハルはしない方が良いと思います。これはヨットの横転を招き危険です。モノハルの場合はシーアンカーも止めた方が安全です。
これはフィンキールのモノハルには大きなキールがあり、これは横流れ防止の為の抵抗として作ってあり、この抵抗がシーアンカーを降ろす事により波に対して船体を横向きにする為横波を受け横転します。
では如何すればよいか?と言いますとエンジンを始動させて船首を波に向け、進まず、流されず、現在位置を確保します。そして荒天が行き過ぎるのを待つわけです。

カタマランの場合はどうかと言いますと、シーアンカーを船首から流し荒天が行き過ぎるのを待ちます。
水中抵抗が少なく二つの船体で足を踏ん張っているようなカタマランでは、一瞬船体が横向きになっても波に押し流され元の位置に戻る為横転する事はありません。
経験者の話では船内で料理も出来る状態だそうです。
この間、地中海からニュージーランドまでカタマランを回航してきた人と話したのですが、操船は楽だし居住性もある。
途中、空は晴れていたが風が強く波が高くなり崩れてきた為パラシュートアンカーを落としヨットを止めたのです。
セールを総て降ろしライイングハルの状態では後ろに2ノットのスピードで流されていたが、パラシュートアンカーを落とすと1日で2マイルぐらい位置が変わっただけで、ノンビリと海の真中で一日中日向ボッコをして過したと言っていました。

彼は回送の仕事が終わり次第アメリカに飛びモノハル艇を買ってクルージングを始める計画でしたが、
この回送でカタマランの良さを発見して彼自身カタマランを買い求める決心をしたそうです。

もう一つカタマランの話をするとき必ず出るのは横転の話です。
クルージング艇で40フィート以上のカタマランは先ず横転しません。絶対ではありませんが横転しません。
レーサーは軽く造り速く走るために操船を誤ると横転しますが、クルージング艇の場合は風が上がってくるとセールを小さくするので先ず大丈夫です。
モノハル艇の方が横転しやすいのです。カタマランの場合は横幅が40フィートでは7メーター近くあり、モノハルの4メターの横幅より安全です。
モノハルは横転しても起き上がると言いますが、起き上がらないのもあり船内に海水が入ると水没します。これはモノハルにはキールと言う錘りがあり海水とこのキールの重さで沈んでしまうのです。
たとえ一回転して起き上がったとして、ヨットは大丈夫であっても、それに乗っている人間は海中に投げ出されたり、船内で頭をブツケたり腕を折るなどの怪我をする事は間違いありません。
ヨットが一回だけしか横転しないとは限りませんから、こんな海の状態では何度も横転することでしょう。
その上、マストが折れたり、海水が船内に入り、助けを求めライフラフトに乗り移り逃げ出す羽目になります。
小さなゴム製のライフラフトに乗り移った人達の多くは過去の結果から言ってほとんどの人は死んでしまいます。

カタマランの場合はキールと言う錘りがありませんので最悪の場合でも海に浮かぶ大きなライフラフトに代わりますし、絶対沈みません。
横転した船には食料や水、救命信号や総てが揃っていますので助けを求めることが出来ます。

こんな危ないことをしなくてもよいではないか?と言われるかもしれませんが、海上より陸上の方が自動車事故で死ぬ確立の方が高く、ヨット乗りが死ぬのは航海を終えほっとして陸に上がった時、車にはねられる事が多いと冗談で言われています。

荒天に遭う話ばかり書きましたが、現実のセーリングというのは、高緯度地方を除けば荒天に遭う確立は少なく一般的には荒天の日はセーリングをしないようにする。また低緯度地方では台風シーズンを避けセーリングする。世界をトレードウインドに乗り3周した人の記録では、平均12ノットから16ノットぐらいの風が吹いたとあります。強風にあった確立は2パーセントだったと言います。

イギリスのヨット雑誌のエディターで10年以上クルージングを続けている人の話では、セーリング中の風の強さは平均12ノットであると書いています。
今の時代宇宙から送られて来る気象情報が簡単に船上で判り、いかに風の無い時をどのようにセーリングするか?という方が問題となってきています。微風で走れるヨットが望まれる時代でもあるのです。

とにかく、今の時代は天候を読んで荒天から逃げ安全に航海するのがクルージングのやり方です。
しかしレースでは目的地に少しでも速く着くのが最大の目的ですので、目いっぱいセールを大きくして嵐のなかでも走り続けるので、海難事故に遭うことが多いのです。レースの人達はこんな事ぐらい覚悟をしておりそれでも速く走り続けることに喜びを感じており、クルージングの世界とは確実に違いますので同じ様に考えないで下さい。

デメリットも書かなければいけないと思います。
先ず船体が大きくなることです。マリーナーの確保が難しくなり、料金が高くなります。
船体が二つになりますので色々なものが二つ必要になってきます。自然にヨットの造船費用が高くなります。
これらの問題はお金のある人には関係の無いことでしょう。
もう一つ、多くの人がヨットとは単体艇であると思い込んでいることで何と無く多数決の原理で肩身が狭いようなところがあります。これは本人の考え方により解決できる事でしょう。

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