Friday, June 23, 2006

 

YOSHI 46

YOSHI 46

カタマランを造るにあたり女房が「デザインはどうするの」と聞くので、俺自身でデザインすると宣言すると、又女房が言うには、「ジウジアロー」だねと言う。
何でそんな名前を知っているのだと問い返すと、あんたが昔自分の口で言ったのよ。
そうだった、昔はカーデザイナーにあこがれていたのだ。
まだ日本のカーデザインが四角く角ばっていた頃、ジウジアローの書いた線は流れるような美しく艶かしいようなデザインだった。その流れるような線にあこがれてカーデザイナーに成りたいとあこがれていたのだった。

そのくせ勉強などしないのでデザイナーに成れる訳が無くそれっきり図面を書くことも無く、今日まで生きてきたのだった。
自分でヨットを造って見たいと、長年の夢に向かって行動を起こすのであるから、デザインもついでに自分で考えればいいじゃないかと簡単に考えて決めてしまう。

一般にヨットの設計者の名前がそのヨットを呼ぶときに使われるので、私もそれに習って [YOSHI 46]
と名づける。何故 「よし」か?と言うと、こちら人はTSUの発音が苦手のようで「ツ」と呼べない。「チュウ」と呼ぶ。
そこで
[TSU]を名前から省いて[YOSHI]と日頃から自分の名前を呼んでもらっている。気がつくと周りにも日本人で[YOSHI]と言っている人が多く目立つ事に気が付く。これがこちらでは一番呼びやすい名前で親しみやすいと日常的に使うことにしている。

[YOSHI 46]は特別他のヨットと変ったところは無く、しいて言うならばジウジアロー的に流れる様な線が多く使われている。これにしても最近のカタマランでは一般常識に近く、サンドイッチ工法では線の優しさが特徴となっている。
一昔前のカタマランは、材料の問題もあり直線の多い硬いイメージで好きにはならなかったのだが、
曲線を多く使いその中に直線をポイント的に入れてゆく様なデザインとなっている。

大きな特徴としては、設計思想にある、 シンプル、美しい線、軽量、これらを両立させる為に新しい船材を用いるところがポイントではないか?と思う。
一般に46フィートぐらいのカタマランでは7,5トンぐらいの重量になってしまう。そこを3トン以内に収められないか?と考えた。軽く出来ると偽装品やセール、総てが小ぶりになって取り扱いが楽になる。
我々のように小柄な日本人が取り回しが楽で、シングルハンドでも操船できるぐらいのカタマランにしたい。

重い物を太いロープで引く時には大きな力が必要となり、時にはそのロープが切れてしまう。
軽い物を引っ張るときロープも細くてよく、簡単に引っ張ることが出来る。この様な原理と同じ事で水上に浮かぶ船でさえ
重いと水中抵抗が大きく船が走るのに大きな力が必要となり、その力の為に壊れないように総てが丈夫に大掛かりとなり結果的に重たくなってしまう。

そこでカタマランの場合は特に性能を発揮させる為には、軽く造る必要がある。軽くする事は比較的簡単なのだが、
経済的に高くなり、強度が落ちやすくなる。
そこで新しい素材を発見してこれを試しに使うことにする。安く、丈夫で、軽い、こんな夢のような素材を使うことにした。

ここで又、女房が心配そうに横から聞く。「あんた大丈夫なの?そんな材料を使って二人で海の底に沈んでしまうんじゃ~無い」そんな事はない、たとえ沈んでもカタマランは浮いており大洋の真中でこれに捕まり、助けが来るのを待てば良いと説得する。
それでも心配そうにしているので、新素材が本当に船材として使えるのか?と調べる。
ありました、すでにこの素材をハニーカムとして、大きなヨットや、フェリー、スポーツカー,モーターボートなどに使っている会社がアメリカにありました。これで我が女房は安心してくれたのです。

これだけ軽く造れるとエンジンは必要ないのでは?と考えたりする。今の私のヨットは8トンあるモノハルですが、エンジンが故障した時はディンギーの2馬力のエンジンでマリーナーまで戻ったのですが、2馬力でも結構走ることが体験できたのです。
ある物の本では、1トン当たり2馬力あればパワーとしては事が足りるとありました。その計算で行きますと3トンのカタマランは6馬力で言い事になります。向かい風や波があるときにはもう少しパワーが必要となってくるので10馬力あればいいのではと考えます。

私は27馬力のディーゼルエンジンを二機初めはつけようと考えていましたが、10馬力を二機に換えようと考えが変り、
その後10馬力を一機でも良いのではと考え始めています。これは実際に造り上げてから決めようと思っているのです。

とにかくシンプルである事が課題のひとつで、そうかといって貧しく成るんじゃ~無い、と考えており、
素顔の美しさと言うか、見るからに成金でブクブク太り私は豊かだ!見たいな開発途上国風の豊かさではなく、
必要なものは揃え、余分なものは持たない風の豊かさ?こんなカタマランにしたいと考えています。

天気の悪い日には久しぶりにカタマランの図面を引き、昔取った杵柄風に思い出しながら、手持ちの道具でキッチンのテーブルを図面台にして不自由をこらえて少しくるった図面を書く。これではまだ信用しない我が女房は「こんなので大丈夫?」と心配をする。
そこで、オス型の250分の1の模型を作って見る。少しずつ図面から形のあるものへと変ってゆく我がカタマランを見て、
半信半疑だった女房も少しずつのめり込んできたみたいだ。
夢のカタマランはまだまだ遠い道のりだが少しずつ、一歩ずつ近寄って行くような気がする。

Saturday, June 10, 2006

 

ヨットと人生の設計

ヨットの設計と書きますと、さも、大それたことのように思いますが、私が設計しようとしているヨットは、カヌーが二艘並び
棒を平行に二本並べ繋ぎ合わせたようなヨットなのです。

近くに世界でも有名な双胴艇の元レーサーが住んでいます。この人は世界をヨツトレースで周ったり大西洋を50回以上横断したり、イギリス一周レースで双胴艇で優勝したりといった数々の功績を残した人なんです。

この人の設計したヨットを造ろうと計画してその資金造りを兼ね、家を売りに出し、長年親しんだ愛艇を売りに出したのですが一年経った今でもまだ売れず燃えていた夢のヨット造りの日が消えそうに成った時、
親友の悲報が届いたのです。ヨットが完成した暁には一緒にセーリングをしたいと癌と戦っていた親友が亡くなったのです。
親友が亡くなった事は大変悲しいのですが同じ歳の青春時代を共にした仲間が死んだ事は、「明日はわが身」の様な
目に見えない現実を見せられた気がします。

同じ頃、我が愛犬も亡くなりました。女房はこの悲しみに落ち込み最近は少しづつ回復してきましたが予想以上に悲しかったようです。以前より私が死んだら「海に灰を撒いてくれ」と女房に頼んであり、愛犬が死んだのでその灰を海に撒きました。
生まれて初めての経験でしたが、今まで 「灰」と一言で言ってもゴミや落ち葉の燃えたものがイメージとしての「灰」でしたが、愛犬を焼いた灰は予想以上に重たく濃紺の海に撒くと海中に散らばった愛犬の灰が朝日に照らされて、
キラキラと美しく海に沈んで行くのです。

「美しい」印象としてはこう感じました。こんなに美しいものなら自分の灰も「海に撒いてくれ」と頼んだことが正しかったと確信し、自信を持ちました。幾ら容姿が悪く醜い私でも焼かれた灰になり海に撒かれる時にはこんなに美しくなるなんて、こんな良い事はない。
私の親友の灰もこの海に撒くことを彼の奥さんと約束してあり日本から届き次第海に撒き供養してやろうと思っているのです。その時までに新しいヨットが出来るとは思いませんが、少しその灰を残して置き「やっと一緒にセーリングが出来たネ」と改めて海に灰を撒いてやりたいと思うのです。

こんな事があり、私自身も余生が残り少ないと感じ、今長年の夢であるカタマランを造らない限りもうチャンスはないとプレッシャーを持ち、資金が都合できないからとのびのびになっていたが、そんな事言っている場合ではなくとにかく始めることにしたのです。
今の所一番の問題は「造る場所」です。適当な場所ではないのですが家の敷地を平地にして仮小屋?テントサイト風の
作業小屋を造る計画です。

カタマランの設計も先ほど書いたように注文しようとしておりましたが、検討する内に少し重いのではないか?と言う疑問がわいてきたのです。凄い功績を持った人が設計したのですが、この人も歳を取り、新しいマテリアルが一杯ある今の時代に40年前から同じ材料を使っているところに疑問を持ち、資金も少ないことと、以前からデザインに興味がある私の体の中からムラムラと湧き出てくるスケベ心で、自分で設計しようではないか?と考えるようになってきたのです。

基本的に私が設計するカタマランはクルージング艇ですので、極端に速く走ることを考えなくても良く、しかしあくまでカタマランの良さを殺さないようにいかに軽く造るか?と言うことが一番の課題となってくるのです。
無論経済的に負担無くということが条件となってくるのですが、そこで今新素材で安く、カタマラン造りに使えそうな材料を見つけ、現在、アメリカ、シンガポール、日本へと問い合わせているところです。

見本の一部が届いたところですが、今からこれをテストしてみて使えそうであれば、注文を出そうとしています。
この国は税金が高く、労賃が高いので自分で輸入して自分で働く以外に制作費を抑える道は無く、
船の値段が高いのはほとんど手作業で造るため労賃が掛かることである。この点を何とかすれば家を建てるぐらいの経費で夢のカタマランが完成するのではないか?と 又夢を見ているのです。

この先どのぐらい時間がかかるのか?見当もつきませんが、私の楽観的考えでは2年ぐらいで完成すると読んでいます?。
ちなみに知り合いの人が作った54フィートのカタマランは6年掛かったそうです。私は46フィートを目標にしており2年と思っていますが、カタマランが出来ても船が大きすぎてマリーナの確保が出来ず、先にはまだまだ問題は山とあるのですがひとつずつその山を乗り越え夢のカタマランが完成する事を夢見ている今日この頃です

Saturday, June 03, 2006

 

なぜカタマランなのか ?

ヨットを始める以前からカタマランが欲しいと理由も無く思っていたのです。
無理にあの時点での理由を探すならば、ヨットの世界ではまだ考え方が新しく、西洋の帆船から来た発想を元にヨットとはこんな物だと言った考え方への反発のようなものだったと思う。

それから20年近くセーリングの経験を積んだ今になっても、以前欲しかったカタマランが今でも欲しいと思うのです。
その理由を今考えて見ますと、
先ず一番先に考える事はその船をどのように使うのか?
私の場合はクルージングをする為に造るのですから、安全な事、適当に速いこと、居住性があること、が大きな問題点となることです。

カタマランは先ずモノハル(単体艇)と比べて速い。
この理由は軽いと言う事と水中抵抗がキールの大きいモノハルに比べて少ないと言う理由からである。ほかにも理由はありますが大きな理由はこの点でしょう。
ではどのぐらい速いか?と言いますと同じ大きさのクルージンが艇が一日100マイル走るとしますと、カタマランは200マイルから300マイル走ります。
クルージングにおいてなぜそんなに速く走る必要があるのか?と言いますと
今のセーリングは安全の為にコンピューターで現在位置と天候を読み取り、荒天から逃れ目的地に向かうのが一般的です。
荒天と言うのは3日前ぐらいから分かります。そして地球の自転があるため西から東へと15ノットから20ノットのスピードで移動します。簡単に言いますと、この時に高気圧がどの位置にありどのぐらいの強さか?により、速さと移動する方向が少し変ってきます。
そこで速い船では荒天から離れる方向に逃げ安全に航海するのです。
カタマランの場合三日前に荒天を発見すると現在位置から600マイル以上離れることが出来ます。これがモノハル艇では300マイルです。荒天が航行中のヨットに向かってくるとしますと一日で480マイル移動します、幾ら離れると言っても荒天に捕まってしまうのです。
カタマランの場合は逃げ切ることが出来るわけです。

荒天に捕まったら如何するか?と言いますと
ヨットのタイプで変ってきますが、モノハルのフルキールの場合はヒーブツーで荒天が去るのを待ちます。
フィンキールの場合は風下斜めの方向に波より速くもなく遅くもなく走り逃げます。
この時には海にスペースがあることが条件となります。これをランニングアウェイと言います。この時の海の広さは最低一日500マイル必要になってきます。
海に広さが無い場合は如何するか?と言いますと、
昔のようにセールを総て降ろしライイングハルはしない方が良いと思います。これはヨットの横転を招き危険です。モノハルの場合はシーアンカーも止めた方が安全です。
これはフィンキールのモノハルには大きなキールがあり、これは横流れ防止の為の抵抗として作ってあり、この抵抗がシーアンカーを降ろす事により波に対して船体を横向きにする為横波を受け横転します。
では如何すればよいか?と言いますとエンジンを始動させて船首を波に向け、進まず、流されず、現在位置を確保します。そして荒天が行き過ぎるのを待つわけです。

カタマランの場合はどうかと言いますと、シーアンカーを船首から流し荒天が行き過ぎるのを待ちます。
水中抵抗が少なく二つの船体で足を踏ん張っているようなカタマランでは、一瞬船体が横向きになっても波に押し流され元の位置に戻る為横転する事はありません。
経験者の話では船内で料理も出来る状態だそうです。
この間、地中海からニュージーランドまでカタマランを回航してきた人と話したのですが、操船は楽だし居住性もある。
途中、空は晴れていたが風が強く波が高くなり崩れてきた為パラシュートアンカーを落としヨットを止めたのです。
セールを総て降ろしライイングハルの状態では後ろに2ノットのスピードで流されていたが、パラシュートアンカーを落とすと1日で2マイルぐらい位置が変わっただけで、ノンビリと海の真中で一日中日向ボッコをして過したと言っていました。

彼は回送の仕事が終わり次第アメリカに飛びモノハル艇を買ってクルージングを始める計画でしたが、
この回送でカタマランの良さを発見して彼自身カタマランを買い求める決心をしたそうです。

もう一つカタマランの話をするとき必ず出るのは横転の話です。
クルージング艇で40フィート以上のカタマランは先ず横転しません。絶対ではありませんが横転しません。
レーサーは軽く造り速く走るために操船を誤ると横転しますが、クルージング艇の場合は風が上がってくるとセールを小さくするので先ず大丈夫です。
モノハル艇の方が横転しやすいのです。カタマランの場合は横幅が40フィートでは7メーター近くあり、モノハルの4メターの横幅より安全です。
モノハルは横転しても起き上がると言いますが、起き上がらないのもあり船内に海水が入ると水没します。これはモノハルにはキールと言う錘りがあり海水とこのキールの重さで沈んでしまうのです。
たとえ一回転して起き上がったとして、ヨットは大丈夫であっても、それに乗っている人間は海中に投げ出されたり、船内で頭をブツケたり腕を折るなどの怪我をする事は間違いありません。
ヨットが一回だけしか横転しないとは限りませんから、こんな海の状態では何度も横転することでしょう。
その上、マストが折れたり、海水が船内に入り、助けを求めライフラフトに乗り移り逃げ出す羽目になります。
小さなゴム製のライフラフトに乗り移った人達の多くは過去の結果から言ってほとんどの人は死んでしまいます。

カタマランの場合はキールと言う錘りがありませんので最悪の場合でも海に浮かぶ大きなライフラフトに代わりますし、絶対沈みません。
横転した船には食料や水、救命信号や総てが揃っていますので助けを求めることが出来ます。

こんな危ないことをしなくてもよいではないか?と言われるかもしれませんが、海上より陸上の方が自動車事故で死ぬ確立の方が高く、ヨット乗りが死ぬのは航海を終えほっとして陸に上がった時、車にはねられる事が多いと冗談で言われています。

荒天に遭う話ばかり書きましたが、現実のセーリングというのは、高緯度地方を除けば荒天に遭う確立は少なく一般的には荒天の日はセーリングをしないようにする。また低緯度地方では台風シーズンを避けセーリングする。世界をトレードウインドに乗り3周した人の記録では、平均12ノットから16ノットぐらいの風が吹いたとあります。強風にあった確立は2パーセントだったと言います。

イギリスのヨット雑誌のエディターで10年以上クルージングを続けている人の話では、セーリング中の風の強さは平均12ノットであると書いています。
今の時代宇宙から送られて来る気象情報が簡単に船上で判り、いかに風の無い時をどのようにセーリングするか?という方が問題となってきています。微風で走れるヨットが望まれる時代でもあるのです。

とにかく、今の時代は天候を読んで荒天から逃げ安全に航海するのがクルージングのやり方です。
しかしレースでは目的地に少しでも速く着くのが最大の目的ですので、目いっぱいセールを大きくして嵐のなかでも走り続けるので、海難事故に遭うことが多いのです。レースの人達はこんな事ぐらい覚悟をしておりそれでも速く走り続けることに喜びを感じており、クルージングの世界とは確実に違いますので同じ様に考えないで下さい。

デメリットも書かなければいけないと思います。
先ず船体が大きくなることです。マリーナーの確保が難しくなり、料金が高くなります。
船体が二つになりますので色々なものが二つ必要になってきます。自然にヨットの造船費用が高くなります。
これらの問題はお金のある人には関係の無いことでしょう。
もう一つ、多くの人がヨットとは単体艇であると思い込んでいることで何と無く多数決の原理で肩身が狭いようなところがあります。これは本人の考え方により解決できる事でしょう。

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