Sunday, October 01, 2006

 

春風

     春風
ここしばらく好天気が続きカタマラン造りがまた一歩前に進みました。
天気は良いのですが風が強く、工場となるテントを建てている時に突風が吹き、
ハシゴに登って作業していた私はハシゴごと飛ばされ危うく怪我をするところでした。

ニュージーランドの春は毎年西からの強風が吹くのが恒例でして、この風が春の間中吹きまくり、この風が止むと夏になるのです。
ニュージーランド南島ではこの風は北西の風となって吹きまくり、時には車でさえ横倒しと成るほど吹きまくります。

こんな風が吹いている中で工場となるテントを二人で建てるのですから大変です。
出来ることなら鉄骨で固めたトタンの工場を建てたい所ですが、何分予算の関係で安上がりなテントにしたのです。
「予に不可能はない」 と言い切って金が出せないばかりに強風の中でテントを建てる。

テントといっても一棟幅6x3メーター高さ2,9メーターもある自動車のガレージに使うテントであり、これを四棟建てるのです。
途中強風が吹きまくり歯止めを壊してテントを壊したり、ポールと成る鉄パイプのねじれパイプが縦に裂けたりとハプニング続きでスッタモンダ

しながら 「強風実験をするには良い時期だ」 と強がりを言いつつ風と戦いながらテントを建ててゆく。

やっと二日掛かりで建てた二棟をしばらく実験的に放置してみる。
風がどの程度強く吹くと壊れるのか?二日後点検してみると何箇所かひび割れが鉄パイプに入っており、上から掛けたビニールシートが飛

ばされペグが抜けた状態でも何とか建っている。
鉄パイプは女房のアイデアーで接骨を直す様に、添え木とガムテープで固定する。

普通のペグではこの強風では持たないと判断して、パイプを打ち込み
これに何本かの紐をテントから地面に向かった方向に紐を余分に張る
これで何とかこの風でもテントが建っていることが出来ると判断したので、残りの二棟を建てる。

二人でスコップと一輪車で堀り均し開けた土地に、やっと四棟のテント小屋が建つ。
このテント小屋に二人で座り込みテント内を眺め回す。
なんとなくこのテント内の空間でカタマランが出来そうな気がしてくる。
テントの中は少し風が吹きまくるにもかかわらず、バサバサうるさい音がするにもかかわらず、居心地が良く、予想以上に温かい。

この中だったらレジンが固まると感じる。
ヨット造りではレジンを多く使用するのでこれが固まる温度や雨風がしのげる場所が必要となってくるのです。
この作業スペースを確保する為にテント小屋を建てたのですが、テント小屋だけでは十分なスペースが取れないので、天気の良い日にはテ

ントのシートをめくったりテント小屋を一旦取り除いたりしながら造ってゆく方針です。

一旦テント小屋が建つと我々の敷地に新しく秘密の隠れ家があるように、毎日せっせと通いこそこそとカタマラン作りを始め出す。
この秘密の小屋に電気コードを引き込みラジオなど掛け、
子供が木の上に秘密の小屋を作るように夢を膨らましながら作業を進める。

総てこのテント小屋で造るわけには行かないのでガレージで下準備をしてはテント小屋に運び込む。
先ずはテント小屋の床を水平にする。
床は土間のままですのでレーベルを使いスコップと板や材木で床を平らにしてゆく。
この上に船体の形造りに必要なオス型を組み立て船体を形作りそれをファイバーグラスとレジンで固める予定である。

オス型を二日掛かり組み立てている時、やっと何とか形が出来上がったんじゃーないか?と、ホッとし
家のデッキでお昼にしようと、春の日差しを浴びノンビリと食べているとき風が一吹き、
 「風が出てきた」 と言いながらも昼食を食べ終える。
テント小屋に行って見るとせっかく立てたオス型が一部風で倒れている。
これはいけないと急いで、組み立て直さねばとやるが作業ははかどらない。
気持ちはあせるが仕事は進まず二人で風に向かってブツブツと文句を言いながらお互いに 「早くしろ」と言い合いながら作業をする。
それから二時間もたった頃、突然突風がテント小屋に吹き込む。

その突風は我々が二日ががりで組み立てているオス型を一瞬の内に将棋倒しにしてしまう。
二人は声も出なかった。
「だめだ」こんな言葉は言いたくはないがこの時はそう思ってしまった。
倒れたオス型をそのまま起こそうともせずに作業を放置してテント小屋を離れる。

このままではだめだ。 何かの良いアイデアーが必要だ一晩考えてみる。
その夜、悔しさで眠れない女房がポツリと言った 「悔しいね!」 
次の日から女房が少し変った。今まで 「あんたの趣味に付き合っている」と言っていた女房が少し真剣にヨット造りを
考えるようになってきた。

「あんたに任しておくとこんな結果になってしまう」 とでも言うように少しヨット造りに真剣になってきた。
二日間の作業が風に倒され無駄になったか?と思っていたが無駄ではなかった。

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