Sunday, September 09, 2007

 

マスト製作

マスト製作

晴れの日が多くなってきた今日この頃です。ニュージーランドに春がやって来たようです。

しかし未だ作業現場は気温が上がらずヨット造りには向かないため、ガレージで作っていたマストを完成する仕事をしています。
マストは太いところで円周が120センチ、先端の細いところは90センチぐらいあり、長さ15メーターと言ったところです。
このマストを二本作るのです。

船体と同じ材料を使い、釣りの好きな私はフライロッドの六角竿をまねて材料を八角のテーパーの付いた板状に切り繋ぎ合わす。
その間に強度を持たすため、竹の節のように1メーターに付き2箇所節を入れて行き、内側にグラスをレジンで張る。

これで内側は出来上がり。この出来上がった8角の筒を繋ぎ合わせるのです。
ガレージで4本ずつ繋ぎ合わせ、これらを野外に持ち出し15メーターの長さに仕上げることにする。

我々の住んでいる土地は急斜面に囲まれ、景色に重点を置いて家を建てたため、平らな土地がないのです。そこで家のベランダから少し登った、眺めの良い峰のようなところを20メーターぐらい水平にスコップで均し、そこに板を並べ、軽飛行機の滑走路のような場所を作る。

ここにガレージで作ったマストを運び込んで繋ぎ合わせる。
言うのは簡単なのだが15メーターのマストを手作りで真直ぐに作るのが思ったより難しく、なかなか真直ぐに繋ぐ事が出来ない。
「遠くから見たら真直ぐに見えるよ」と私が言うと、「いや、未だ曲がっている」と言い張ってなかなか女房の許可が下りずに又マストを真直ぐにしようと努力する。

天気の良い昼間は春の花が敷地一面に咲き乱れ、この世の天国となる我が敷地で、二人がマストを真直ぐにしようと奮闘するのです。
幾らやっても満足が行かず「ふと」周りを見渡すと満開の花の中で働く自分の姿に気づく。

二人で何と素晴らしいところで働いているんだろうと、こんなことをやっていられる我々は今幸せだと感じる瞬間である。
これがニュージーランド暮らしの一番良い季節かもしれない。

こんな事をしているとおかしな日本人が何か変わったことをやっているといろいろな人達がやって来る。
多くは仕入れの関係の人達で有るが何か儲け仕事はないものかと訪ねてくる。
この間もアメリカスカップのチームニュージーランドの一員であると言うグラントが訪ねて来たのです。

おかしなことをやっている日本人に興味を持ったのか、アメリカスカップで新しいデザイナーを探しているため私の所に来たのか?
とにかく覗きに来たのです。
この人は日本でヨットチームをコーチしていたこともあるそうです。日本人のお人好しさをよく知っているので何か仕事に繋がるものはないか?とやってきたのですが、自分で書いた図面を見せてカタマランを造っていると説明すると感心してくれて、何も教える事が無くなったと言った感じで昔の知り合いの話をして帰って行きました。

ヨット乗りの世界は狭く、お互いに顔見知りが多く、私達もこの国では異邦人ながら20年もセーリングをしており知り合いも多い、
昔話をするとだれだれは「今どこにいる」などと直ぐにわかってしまうのがヨット乗りの間柄です。
こんな道楽をしていると新しい人達との振れ合いもあり少しずつ輪が広がって行くのが楽しみです。

とにかくそれでも気を取り戻してマストを真直ぐにするために又奮闘するが、完璧には真直ぐにはならないので、
遠くから眺めたり、近くでかがみ込み眺めすかす。
とにかくこのぐらいで良いのではないか?と言う妥協点でマストを繋ぐ事にする。その後にもう少し補強のためにグラスのテープを8面に張ってこれをフィラーで固める。

このフィラーをサンドペーパーで磨き出し、少し曲がったマストをスムーズにして少しでも真直ぐに見えるように直してゆく。
一本目のマストをここまでにした所で材料が切れてしまい又材料が入り次第作業を進める事にする。

マストを作っていて気づく事は、一見重そうな電信棒のように横たわるマストだが、作業の関係上転がす時に二人で簡単に転がる。
今、マストの重さは65キロぐらいと思うが、一見したところクレーンでも使わないと腰を痛めるのではないか?と思うような感じのマストである。
ところが、自分が今まで生きてきた経験から感じる物体の重さとでも言えばいいのか?「これは重そう」と感じる物が実際に転がしてみると重たくない事に驚く。
いったい私は何を言いたいのか?というと、自分の中にある感覚では計り切れない重さの感じ方に驚く。

こんな新鮮な驚きを感じながら、このカタマランが完成したら、キット今までの自分の中にあるヨットというか、船と言うか、今までと違った乗り物が出来てくるのではないか?と期待に胸をときめかす。

こんな気持ちになるのも気温が上がり始め、春になり花が咲き乱れる時期になったせいでもあるんじゃ~ないかと思うのです。

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