Friday, January 25, 2008

 

ニュージーランドの造船事情

ニュージーランドの造船事情

毎朝5時に起きて夏の暑さを避け仕事をしていますが、朝目覚める瞬間に女房が叫ぶ。突然「バルクヘッドに開けた穴が大きすぎたのではないか?」
未だ眠くて頭がボーッとしているのに何の話だ、と問い掛ける。
「昨日開けた通り抜ける為の穴が大きすぎたのではないか?」と心配している。

最近カタマラン造りに一生懸命になってくれている女房は、時々寝言の様にカタマラン造りの事を口走る。それが毎日のようで二人でカタマラン造りを討論するのが最近の起きがけの挨拶になっている。
ここでよく問題となる事は、こんなに材料代を使い、時間を費やして、我々は何をしているのだろう?と言う事である。確かにこれだけの材料代に使う金があれば中古のカタマランを買うことも出来るのだが、「いったい何をやっているのだろう?」と自問する。

改めて考えてみると船が欲しくて造っているばかりの理由では無い、と言う事である。長年カタマランを造ってみたいと夢に見ていたのだから、造る事を楽しんでいるのだと女房を納得させる。
長年ヨット造りを勉強し話を聞いたりしてきたのだからこれらを総合して自分で造ってみようとしているのだ。

こんな話をしながらニュージーランドのヨット造りを眺めてみると、ヨット造りにおいて費用の問題点が大きく左右している事が分かる。
我々がニュージーランドでヨットを始めた頃は、カスタム艇が多く自分達でヨットを造る人達が多かった。これが大きく変化したのは アメリカスカップからだろう。このレースに勝って以来ブーム到来とばかりヨット造りが盛んになった。

造船の世界では人件費が高くなると採算が取れずに人件費の安い国に奪われてしまうのが一般的である。
この労賃が高くつくのは手仕事であるためと艇数が出ないヨットであるためである。
ヨット造りの多くの時間は単純な仕事で特殊な技術が無くても出来るような仕事が多い。だから一人の塾錬工がいれば後の人は単純仕事が出来ればよいといっても間違いでは無い。

ニュージーランドのようにヨット造りが盛んになり、アメリカスカップに負けてしまうと今までヨットを造っていた人達が一杯余ってしまう。
ヨット造りの熟練工は余ってくるのだ。
昔は木材を使い蒸気で蒸してそれを曲げ間にコウキングをして水漏れを防ぎ船を造っていた。
その後同じ木材を使う船でもエポキシの開発と共に薄い板を交互に斜めに張りエポキシで固めて造る工法が開発された。この時代は活気的だったのだが、だんだんと他の工法にとってかわる。

同じ頃、メス型を造りこれにポリエスターとファイバーグラスで形を造り抜き出し仕上げてゆく方法が開発された。今でも一般的に一番多くヨットが造られている方法である。
広くヨットが乗られるようになった事と忙しく働く人達がメンテナンスが少なくて済み軽くて手ごろな値段のヨットが多く売れる時代になったのです。

ニュージーランドも今はこんなプロダクションボートに人気が出ておりヨットは工場で大量に生産される時代になっている。とはいえ未だに車と違い数の出るものではありません。
今ニュージーランドではスーパーヨット造りとレース艇造りが目立っています。
ワンオフのレース艇ではインフュージョン工法で造られカーボンを使い軽くて速く好評です。

ニュージーランドのヨット造りをそばから見ていますと大きく二つに分かれると思います。最先端のヨットを造る人達と昔ながらのヨットを造る人達。
最先端のレース艇を造る人達は未だに盛んに必要とされていますが、昔ながらのヨット造りは斜陽産業となりつつあります。
この様なヨットは外国からのプロダクションボートが売れているのです。

私の今造ろうとしているヨットは趣味の世界ですので決して自分の力量があって造るのではなく、自分が20年間セーリングをしてきてこんな船が欲しいとの考えで造っています。
私の考えでは軽い船が欲しいと思っているのです。
前回でも書きましたが、今造っている材料は未だ公表はしていませんがニダコアーのハニーコムと同じ素材です。しかしハニーコム形状にはなっていません。

この材料はプラスチックの中でも一番軽い材料です。これでカタマランを造っているのです。
これは私のチャレンジでもあります。うまくこの材料でカタマランが造れれば乾燥重量3トン半ぐらいで完成すると願っています。「願う」と言うのはとかく造ってゆく上でだんだんと重たくなるのが世の常です。

同じサイズのカタマランではプロが造って7,5トンぐらいです。これでどのくらい軽く造れるかお分かりだと思います。
しかしこの造り方では大変仕事の量が多くて(ただ今2年目の夏)プロが造るととんでもない値段になるため、多くの船はマリン用ベニヤで造られるのが一般的です。
ベニヤは加工が簡単な上に仕上がりが比較的綺麗なためフェァーリングの仕事が少なく労働時間が短くて済みます。

しかし、重量が重たく形がゴツゴツした感じが強くなる欠点があります。欠点を我慢しながら安上がりにヨットを造るか又は、時間を掛け労働を多くしながら軽く造るか?どちらを採るか?決断を求められるのです。私は後者を選びました。

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